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Artist

PELLO EL AFROKAN

Title

FUNKY AFROKAN



Japanese Title ファンキー・アフロカーン
Date 1974-1987
Label DISCO CARAMVA CRACD-302(JP)
CD Release 1994
Rating ★★★★
Availability ◆◆◆◆


Review

 革命後のキューバ音楽は、オルケスタ・アラゴーンに代表されるようなチャランガ編成の優雅なサウンドが主流になって、あまりわたしの興味をそそらない。80年前後にサルサからの影響で、シエラ・マエストロやアダルベルト・アルバーレスといった革命後の若い世代を中心に、ソンを見直すムーヴメントが起こった。でも、それらのうち、おもしろいと感じたものがほとんどないというのはどうしたことか。思うに、テクニックの面では申し分なくても、みんな優等生的で、ネジが1つ、2つブッとんだようなところがないのだ。

 ディスコ・カランバは、日本のアオラ・コーポレーションが運営するキューバ音楽専門のレーベルだが、おもに革命後の音楽が中心のせいか、これまで買ったなかで納得のいくアルバムにはほとんど出会っていない。
 数少ない例外が本盤。モザンビーケと称する独自に考案したビートを操る怪人ページョ・エル・アフロカーンの音楽は、ちょっと聴いただけではこれがキューバ音楽だとはにわかに信じられない。こんな音楽、いまだかつて聴いたことがない。完全にネジがブッ飛んでいるのだ。

 細分化され複雑なリズムを繰り出すパーカッション群を中心に、打楽器のようにアグレッシブなピアノ、うねりながら徘徊するベース、分厚くはぎれのよい2本のトロンボーンが覆いかぶさり独特のグルーヴを生む。そして、収拾不能なまでに四方八方に飛散するリズムの真っ直中を、南アのマハラティーニ、セネガルのパプ・セック二代広沢虎造も真っ青の、ページョのしゃがれヴォイスがうなり節をかます。
 アフリカの伝統音楽に多いハチロク(8分の6拍子)もあったりと、ビートが全体に前のめり気味で、気ぜわしいことこのうえない。ファンキーとはページョのためにあることばと知った。

 ピアノは、ブエナ・ビスタで一躍時のひとになったルベーン・ゴンサレス。ルベーンは、エンリケ・ホリーン楽団からのゲスト参加だが、日頃の優雅なサウンドからは想像もつかないパーカッシブなピアノで、ここぞとばかりに鬱憤を晴らしている。ただ、ラテン系音楽でピアノが打楽器と化したときには、決まってサルサっぽくなってしまい、なんか一気に俗っぽい現実世界に連れ戻されるような瞬間があって、ルベーンの起用はある意味、大正解、ある意味、失敗といえそう。

 ルベーンがゲスト参加した前半の8曲は、83年発表の"UN SABOR QUE CANTA"からの音源だが、9曲目以降の8曲は74年と76年に発表されたシングルが音源。ここでは、トランペットも加わり、前にくらべたらよっぽどキューバらしい音楽だ。とくにノンキなコーラスにはチャチャチャの影響が見え隠れしている。といっても、それはそこページョのこと。根幹にあるのは、カーニヴァルの音楽であるアフリカ色のつよいコンガをヒントにしたモザンビーケ中心のディープで変態的な音楽である。ウィルフリード・バルガスの全盛期を支えたハゲ・オヤジ、ルビー・ペレスのような甲高い金切り声が突如として入ってくるなど、八方破れのマヌケさが最高。

 しかし、変態度ナンバー1は、エレキ・ギターとブラスがイントロが安っぽいスパイ・アクション映画のサントラみたいな'BAILALO ASI' って曲。ブルージーなハモンド・オルガンがフィーチャーされ、最高にいかがわしいムードを醸し出している。なのにパーカッションはアフロっぽいってところがおかしい。ちなみに、この曲のスタイルはモザンビーケではなくて、ファンタシアだそう。ますますいかがわしい。
 この曲に続くモザンビーケ'RITMO Y MELODIA' でも、例のハモンド・オルガンが入っていて、どこかヒーローが危機を脱出してフィナーレを迎えるときのマヌケな爽快感がただよう。この2曲のノリでアルバムを1枚つくったら、ウィルフリード・バルガスよりブッ飛んだものになっていただろう。

 最後の3曲は、87年の"CONGAS POR BARRIOS"からのもので、フォルクローレとしてのコンガを再現した企画もの。それまでにくらべると演奏内容はおとなしいが、資料的価値は高いと思う。
 純粋なキューバ音楽ファンより、ファンクとかが好きなひとにとくにオススメしたい1枚である。


(8.11.02)



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by Tatsushi Tsukahara